2004年11月15日

映画『ニューシネマパラダイス』

 いい映画だった。本当に観てよかったと思った。こんな映画に出会えるのは久しぶりでうれしくなった。

 たくさん書きたいことはあるのだが、ひとつ印象に残ったことを取り上げれば、それは映画技師のアルフレードが、息子のように大事に思う青年トトを突き放すところだ。「おまえとはもう会わない」「村には帰ってくるな」「お前が見た映画とは違う。人生は、もっと困難なものだ。行け・・・・ローマに戻れ」などの言葉である。長年映画館の映写室で語り合った仲だったが、アルフレードのこの言葉によって、トトはローマで生活を始めることにし、2人はもう会わなくなる。母親が何度も電話しても、トトは連絡がとれず、村には帰ってこない。

 なぜ、アルフレードはトトに対してこのような言葉を言ったのだろう。アルフレードは決してトトを見放したわけではない。トトを肉親のように愛し続けてはいたけれども、愛するが故に、トトのことを思うが故に、トトを突き放した。そこに、逆説的ではあるが、深い愛情がある。母親にはそのことができない。トトをいつまでも自分の連絡が付くところ、手元に置きたがる。でも、最後の子育てというのは、子を巣立ちをさせること、突き放すことなのだろう。それが、僕にはうれしかった。実際に実家を出ろと言ってくれた親に感謝したくなった。

 アルフレードの言葉は、まるでノスタルジーに浸ることすら拒むように、力強く響く。ノスタルジーや映画の世界に浸っていては前進しない。思い出は、そのうちに大切に大切に取っておくべきものではあっても、それが拠りどころの全てになっては、未来がない。映画は、そのうちには夢や希望があっても、現実がない。村という閉鎖空間、映画という虚構空間から、そこに浸りきらずに現実や未来を直視する力、その力強さを、アルフレードの言葉は僕に感じさせる。最後のシーン、壮年になったトトが昔のフィルムを観ながらまさにノスタルジーに浸る場面があるが、でもそこには、過去のみの世界が全面にクローズアップされるのではなく、それを超えた爽快感があるように思う。


posted by かっしー at 03:39| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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