2005年01月21日

世の中いろんな人がいる__イスタンブールでのぼったくりクラブ体験

この話は、告白するのは恥ずかしいのだが、書くべきことだと思うので、書く。

話というのは、夜のイスタンブールをひとり散歩していたところから始まる。道を渡ろうとした時、「あ、車来てるよ」と横にいた人に何気なく注意されて、振り向くと同い年くらいの青年がいた。向かう方向が同じだったので、歩きながら「どこから来たの?」「何才?」などの簡単な会話をした。彼は、同じ21才で、イスタンブール大学でメカニックを勉強しているという学生だった。なかなか気が合ったので、いろいろ話したいなと思っていると「これからビール1杯飲みにいくんだけど一緒に行かないか」と言われ、一緒に飲みに行くことにした。

タクシーで10分くらい乗って、繁華街へ移動し、彼の知っている店に入った。地下への階段を下りていくと、噴水がある。音楽がガンガン鳴っていて、照明は暗い。「バー」っていうより「ディスコ」。踊っている人もいる。席に着くと、すぐにビールが出てきて、そのあとすぐ女の子が隣にやってきた。「え、あれ、こういう店なのか…やばい、高そう…」と思って早く出ようと思ったが、とりあえず女の子にオゴらなくてはいけないらしく、コーラを2杯オゴった。早く帰ろうと言っても、一緒に来た彼が楽しんでいてなかなか帰ろうとしない。結局30分位いただろうか、隣の女の子はタジキスタン人の21才で、1年間働きに来ているらしい。でも、彼女との会話は英語だし、こういう場でどういう話をすればいいのかもよくわからず、あんまり話は続かないまま、ふと周りを見てみたら、やたらとウェイターがいて、しかも結構怖そうな感じの人がたくさんいる。なんだか本当に怖くなってきて、彼に「帰ろう、帰ろう」と連呼し、やっと会計をお願いした。その金額を見た時、僕は一気に血の気が引いた。ビール1杯とコーラ2杯で「900ユーロ」。日本円でいえば12万円はくだらない。2人で顔面蒼白になって「うそだろ、ちょっと待てよ」と抗議しようとしたら、横にいた彼はさっとクレジットカードを出して半分払った。僕も「え、マジで払うのかよ」と思いながら、クレジットカードを出したら、「キャッシュがあるならキャッシュで」と言われ、腹巻に隠しておいた現金で450ユーロを出した。それがちょうど有り金全てだった。もう一気に頭が混乱してしまい、何も考えられなくなってしまって、とりあえず急いで彼と一緒に店を出た。そのときすでに0時半。僕のホテルは安宿で、0時に門限だった。僕はすっかり気が動転したまま、「どうしよう、帰れない、泊まる所がない」と彼に言うと、地元の人向けの安いホテルに連れて行ってくれた。「あーどうしよう」とひたすら絶望に打ちひしがれる僕に対して、彼は「金のことなんか気にするな、男だろ」というようなことを言ってきた。よほど混乱して呆然としていたのだろう、彼はホテルのラウンジでコーヒーをオゴってくれ、部屋まで案内してくれた。彼が帰った後、とりあえずボロい部屋で横になったが、さっきのショックで全く眠れない。ガクガクと身体が震え、「夢だ、夢だと言ってくれ!」というような心境だった。そして、部屋の中でふと考えていたら、僕を連れて行った彼は、実は店のグルだったことに気がついた。クレジットカードは出していたがサインはしていなかったし、終始機嫌がよくてやたらと嬉しそうだったのは僕の金の何割かを貰えるからだろうし、最後にメールアドレスを聞いても教えてくれなかったのは身分がバレるとヤバいからだと、次から次へと根拠が挙ってきた。あぁ、気づくの遅かったとバカな自分を惨めに思うと同時に、ちょっとの時間でも信用して友達だと思い込んでいた人に完全に裏切られたという事実は、ショックにさらなる追い打ちをかけた。これが本当に悲しかった。

翌日、結局ほとんど眠れなかったが、部屋をチェックアウトして本来の自分の宿に帰った。昨夜もちゃんと食べていないので、ものすごく腹が減っていた。でも、ほとんどお金がない。しかたなく、ただのパンを買ってむしゃむしゃとかじった。昨夜のことは、もう後悔しても仕方ないし、あんまり思い出さないようしようと心に決めた。でも、普通に町中を歩いている時でさえ人間が怖くなってしまって、半径1m以内に人が入ってこないように、人を逃げながら歩いた。

「忘れよう、忘れよう」と思っていたので、警察にも行かなかった。思い出したくもなかった。笑って誰かに話せるほど余裕はなかった。夕方ごろ、街をフラフラしていると、日本語のできる土産物屋さんが話しかけてきた。「トルコどうですか?」と聞かれたので「実は昨日……」という話をぼちぼち話したら、非常に親身に話を聞いてくれて、いろいろ教えてくれた。「そのクラブは悪いので有名で、逃げてきた人もいます。ときどき人も殺します」と言われた時は、背筋が凍った。あと、「450ユーロはわたしの月給より多い」という話を聞いて、もう6万円を捨てたもんだと諦めるのではなく、トルコにいるんだからトルコを基準にして考えなきゃダメだと思った。もう思い出したくもなかったけど、必死に思い出して、その界隈をひたすら走り回って店を探し当て、その後、7時半頃に警察に行った。

警察では非常に真摯に対応してくれた。警察の人はみなそのクラブの名前を知っていた。「グランド・ヒサール」というクラブだ。英語で話を聞き取ってくれて、書類を作った。ずいぶんと何時間も待った。もう夜0時を過ぎたころ、呼ばれて別の部屋へ行くと、知らない男女5、6人が並んでいる。「この中に昨日の人はいるか?」と警察に聞かれ、いなかったので「No」と答えた。こわかった。これが2回くらいあった。結局昨日の人は見つからず、深夜1時くらいに解放され、僕はトボトボと歩いてホテルへ戻った。その途中で、「グランド・ヒサール」の近くを通ったのだが、また昨日と同じように声をかけてくる連中がいた。僕と同い年くらいの青年で昨日と同じように「一緒に一杯ビール飲んでこうよ」とうるさい。もう、本当に悲しくなった。彼らは人を騙すことで金を得ている。そういう人に対して、どんな言葉を返せばいいのか、何を言ったらいいのか。全くわからなかった。僕が会ったことのない人間だった。

相談に乗ってくれたお土産物屋さんは本当にいい人だった。僕は最後に裏切られて終わるのではなくて、こういう人に会って旅を終えることが出来てよかった。トルコでいい人にもたくさん出会った。そのたびに人間を好きになった。あの男に話しかけられる直前も、本当に優しいトルコ人に出会って話ができて、とても幸せな気分だった。それを全くもって裏切られたのだから、ショックは本当に大きかった。世の中、そう簡単じゃない。安易に他人を信じられるものではない。いい人もいれば、悪い人もいる。本当にいろいろな人がいる。そんな広さを、僕は少しだけ思い知った。悲しさとともに。
posted by かっしー at 18:09| 東京 曇り| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あついよ。本当に熱いよ。
僕のカマほった話覚えている?笑い話だよ。
僕トルコ人はスキだった。 だめな奴もいるけど
いい奴ばっかりだったな。あまり自分から話をしない、感じだったから、心配してました。けど、そうやって外に出ることしてたの聞いて、少しうれしかったです。
Posted by なかせ at 2005年01月28日 08:28
旅ではいろいろお世話になりました。

「カマほった話」は忘れたくても絶対忘れられません。異国情緒あふれるイスタンブールならではですよね。アジアとヨーロッパの文化が融合する街だからこそ、男女という性差まで融合しちゃったのかも、なんて。あはは。
Posted by かっしー at 2005年01月31日 14:44
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