2007年05月29日

映画「バベル」

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友人と「バベル」を見に行った。

豪華キャストの大がかりな映画のわりには、ありがちな感動ストーリーや大スペクタクルもなく、描かれる世界はいたって現実の自然な日常的世界。押しつけがましい主張も一切なく、かつテーマとしては非常に重く、考えさせられる真面目な映画だった。映画の中心テーマは「我々は相互に理解できない」というその一点である。このテーマで考えれば、この映画は静謐な悲劇であり、物語の姿勢は基本的にニヒリスティックだ。そういう意味では、そのへんのちゃちな感動モノドラマよりも圧倒的なリアリティがあるし、現代社会の孤独をめぐる問題を斬り込んでいく強さが感じられ、自分はとてもおもしろく見た。

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posted by かっしー at 02:15| 京都 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月28日

映画「気狂いピエロ」(ジャン=リュック=ゴダール)

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 ストーリーはないに等しい。男と女が人を殺して、パリから逃避行する。愛と永遠。死と芸術。鋏で切り取られ、貼り付けられたような、断片的な言葉や映像、絵画。普段映画を見る時にはストーリーを追い求めずにはいられないが、そうしていくとわけがわからない。物語の「筋」はほとんど無視されている。そういうところからの「カタルシス」もない。女が死んだところで、悲しがっている男に感情移入もしない。なぜ男が青くペンキを塗るのかわからない。挙げていったらキリがない。そうだ、そんなことはどうでもいいんだ。とにかく、最後のシーンの海がとても美しい。空と海が融け合う映像は、「永遠」という言葉が重なって、吸い込まれていきそうだった。それだけで、僕は観てよかったと思った。

 女が歌うミュージカルのようなシーンもよかった。この映画、描かれ方がすごく自然なのだ。前後の辻褄は合わない時も多いけれど、そのシーンはなぜか躍動感に満ちている。そう思っていて、ちょっと調べたら、どうやらこの映画は全編シナリオ無し、即興演出で撮られたらしい。なるほど。その全体の構成もいい。明るいシーンもあれば、深刻なシーンもある。その場の空気を重たく定めようとしない感じは快かったし、観ていて全然飽きなかった。

 映画ファンなら避けて通れない、天下のゴダールである。でも、僕はそんなに感動したわけではなかった。むしろ観た後に残る疑問のわだかまりが苦痛ですらあった。といいつつ、忘れた頃に、また観たいと思ってしまうんだろうな。そしてまた思いっきりはぐらかされるんだろう。非日常。逃避。倦怠。死。美。愛。永遠。そんなもののどれかに心惹かれた時にでも。
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2005年07月22日

黒澤明『生きる』

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「仕事を休んでも誰も困らない」「生きているけど死んでいる」などと言われる男、渡辺という男は、役所の市民課課長であり、30年間無欠勤で仕事をしてきた。早くに妻を亡くし、ひとりで苦労して息子を育てるが、成長して結婚した息子は、最近は年老いた自分の遺産のことばかり気にしている。ある時、渡辺は突然医者から「胃ガン」と宣告される。「胃ガン」とは死を宣告されたと同じである。よほどショックで肩を落とし、自分が何のために生きてきたか、何をしてきたかをとうとうと振り返る。そして、せっかくなら貯めてきたお金をパアっと使おうと遊びにでかけるが、どんなに騒がしい場にいても、やはり死ぬというショックは消えない。ひからびたような役所の職場を離れ、玩具の製造工業に移った女性は言う、「つくるのは楽しいのよ。課長さんも何かつくったらいいわ。」その話を聞いて、自分も何かをつくろう……と思い立つ。そして、誰もが受け身の役所において、ある場所に公園を作ってほしいという市民の要望か ら、自分から主体的に動いて議員や他の課の人を説得し、公園を実現させる。そして、最期その公園でパタリと死ぬ、という話。

 もう、本当に胸が熱くなった。
 「生きる」とは、まさに生を「自ら」全うすることであって、さらに「つくること」=創造することを通じて、より本来的に「生きる」ことができるのだ。裏返せば、それは、役所的な怠惰・受け身姿勢、ルーティーンの意味のない繰り返しへ痛烈な批判でもある。実存的だ。死を意識することによって、より「生」なるものへ、自分自身をより本来的な自分へ「投企」することができる。たぶん、黒澤明はハイデガーと気が合うよ。なんとなく。
posted by かっしー at 03:50| 東京 🌁| Comment(3) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月15日

映画『ニューシネマパラダイス』

 いい映画だった。本当に観てよかったと思った。こんな映画に出会えるのは久しぶりでうれしくなった。

 たくさん書きたいことはあるのだが、ひとつ印象に残ったことを取り上げれば、それは映画技師のアルフレードが、息子のように大事に思う青年トトを突き放すところだ。「おまえとはもう会わない」「村には帰ってくるな」「お前が見た映画とは違う。人生は、もっと困難なものだ。行け・・・・ローマに戻れ」などの言葉である。長年映画館の映写室で語り合った仲だったが、アルフレードのこの言葉によって、トトはローマで生活を始めることにし、2人はもう会わなくなる。母親が何度も電話しても、トトは連絡がとれず、村には帰ってこない。

 なぜ、アルフレードはトトに対してこのような言葉を言ったのだろう。アルフレードは決してトトを見放したわけではない。トトを肉親のように愛し続けてはいたけれども、愛するが故に、トトのことを思うが故に、トトを突き放した。そこに、逆説的ではあるが、深い愛情がある。母親にはそのことができない。トトをいつまでも自分の連絡が付くところ、手元に置きたがる。でも、最後の子育てというのは、子を巣立ちをさせること、突き放すことなのだろう。それが、僕にはうれしかった。実際に実家を出ろと言ってくれた親に感謝したくなった。

 アルフレードの言葉は、まるでノスタルジーに浸ることすら拒むように、力強く響く。ノスタルジーや映画の世界に浸っていては前進しない。思い出は、そのうちに大切に大切に取っておくべきものではあっても、それが拠りどころの全てになっては、未来がない。映画は、そのうちには夢や希望があっても、現実がない。村という閉鎖空間、映画という虚構空間から、そこに浸りきらずに現実や未来を直視する力、その力強さを、アルフレードの言葉は僕に感じさせる。最後のシーン、壮年になったトトが昔のフィルムを観ながらまさにノスタルジーに浸る場面があるが、でもそこには、過去のみの世界が全面にクローズアップされるのではなく、それを超えた爽快感があるように思う。
posted by かっしー at 03:39| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月22日

映画『オール アバウト マイ マザー』

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ひとり息子を亡くした母親が、その子の父親であるかつての夫を訪ねていく、というのが一応本筋のストーリーなんだが、なんだかその周りにいろいろな女性が出てきて、それが非常に印象的で楽しい映画でした。とにかく自然体でいる「女」がたくさん出てきます。妊娠してエイズにかかってしまった修道女、男から女になったオカマ、レズっ気のある失意の女優など。でも、その撮り方がごく自然で、全然暗くなくてカラッとしている。まるでスペインの空気ように?

「赤」がいろいろな登場するのですが、それがとても鮮烈で、パリっとしているのがいい。血の色。生命の象徴である赤が、新しい赤ん坊の命に重なって、「私たち生きているのよ、生きていくのよ」と感じさせられました。
posted by かっしー at 15:26| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年05月11日

映画『永遠の語らい』

ショッキング。ただその一言に尽きる。見終わった後はただ呆然として言葉もなく、明るくなっても席を立てずにいた。ホラー映画やアクション映画の「ショック」とは全然違う。より唐突で、でも奇をてらったものでは全くなくて、それゆえ現実に非常に近い、現実よりもリアルな生々しさのある映画として感じられた。船で様々な歴史を散策していく、その歴史ひとつひとつには重みがある。それに比べたら、現代にある種の「軽さ」を感じた。よりダイナミック、より大きな爆発音だからこそ、逆に、軽い。なんだろう。
posted by かっしー at 22:59| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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